EPCOTIAで神席に当たった話。
今年はオーラスのチケットが取れなかった。
デジタルチケットになってから、目の前のスマホで手間をかけずにいつでも申し込みが出来るようになった。
私の初デジチケ当選は2018年のカウコンである、その時は仕事から帰る途中に申し込み期限が迫っているFCメールが来たので、そのタイミングで応募したのだった。そして当選。
…だから、つまり、「コンサートも申し込み期限が迫って来ているギリギリで滑り込んだ方が当たる確率が上がるかも。」と思ったのだ。
結果を言うと、忘れていた。
オーラスだけすっかり応募するのを忘れていた。
チケット戦争、戦うどころか、リングに上がりもしなかったのだ。
あああああーーーー!!!!!!
毎度おなじみ、毎年一緒に行く予定の増田担と手越担、3人で話し合った結果、増田担がオーラスを応募した、その結果は落選。
やっちまった………。
2人は優しいので、大丈夫だよーと言ってくれたけど、私は私を世界の果てまでぶっ飛ばしたい。
そんな事もあって、私たちのオーラスは静岡になった。
オーラス、入れないのが残念で、ぼんやり力が入らない気持ちがあったけれど、ここは切り替えていかないと全てのことをなあなあに過ごしてしまいそうで怖かった。
特に私は、考え事があるとコンディショナーも流さないで風呂から出てくる女である。
せっかく増田担は宮城、手越担は静岡を当ててくれたのだ、無駄にはしたくない。頭からつま先まで神経を集中させたい。
なにかの偶然が重なって、ふとアイドルと目があったとして、全然かわいい笑顔とか出来ないで能面みたいな顔になって(な、なんだ……?)と思われたとしても、ちゃんと記憶したい。
オーラスが全てではないし、前向きに考えればDVDでも観れるという信頼。
そもそも静岡の公演もオーラスくらい素晴らしいはずだ、だってあのNEWSだもんな。
静岡エコパアリーナ、車が進むにつれNEWS担が多くなる。ここにいるみんながNEWSのこと好きなんて、最高過ぎる。
3年前、コンサートやジャニショ独特の女の独占欲が渦巻くような雰囲気が苦手だと言っていた自分が嘘のようだ。
元々平和主義だけど、年々心の棘が穏やかになっている気がする。成長したのかな?いや、歳か…。
車の中やラッピングカーの前で写真をたくさん撮って、毎年の通り楽しい拗らせっぷりを堪能した。幸せだ、しかもこのあとコンサートが観れる。やっぱり気持ち切り替えてよかった。
そして開場時間、大勢のジャニオタ達が入口へと向かい、並ぶ。そこはさながらコミケ会場縮小版である。
デジチケになって、1番変わったことは「席が当日まで検討もつかない」ということ。
不安と焦りを覚えたジャニオタの中で様々な推測が飛び交っているが、中々やっぱり番号だけじゃ席を確定する事は難しい。
そんなわけで、列に並んでる間に受付を通った同士の叫び声が後ろまで響いている。サザンのライブもこうなのかな…。
のちにこの叫び声に救われる事になる。
受付が近付いてくる、目の前に見えるのは「←スタンド、アリーナ、スタンド→」の文字。入れればどこでもいい。コンサートが見れればどこでもいい。だけど、人間とは本当に欲深い生き物で瞬時に「スタンド、天国、スタンド」と置き換えてしまった。
死後の世界で閻魔大王の振り分けを待っている人ってこんな気持ちなんだろうか。だったとしたら、無になどに還らずこの記憶のままそこへ行きたい。
「センターステージの周りがいい。DVDでよく写ってる席がいい」
気がつくと、それまで友人達と「入れればいいよねぇ」「後ろかもしれないよねぇ」「でも入れればいいよねぇ」と誤魔化してきた欲が、意識もせずに小声でするりと口から出てしまった。
驚く手越担。頷く増田担。
禁句ではあった、なぜなら期待してしまうから。勝手に邪な期待をして、そのくせ裏切られたらショックを受けるから。
チケットが発券される。「宇宙旅行へ行ってらっしゃい」といわれ、夢の国ばりに作り込まれてる世界観のお姉さんに感動する、発券したチケットを裏返しに渡してくれるのも素敵。
まあ、表で渡して目の前でジャニオタに叫ばれちゃお姉さんも堪らないよな。
チケットは裏側のまま。
「行くよ、行くよ」「まって!」「行く…」「え?」「まって!いいよ!」「え?」「はい!」
表に返すと増田担がいち早く「ひゃーーー!」と叫んで手越担が「アリーナ!?」と言った。
私はというと1番最初に列の番号が飛び込んできて「あら、結構後ろの方だわ…」なんて思っていたので、アリーナの文字に全く気づかなくて、ワンテンポ遅れてしまった。マイナス思考、そういうとこだぞ。
叫び声でアリーナの文字を見つけて「ひゃーーー!」と言ってしまった。はっと気付いて周りに迷惑かけてるかも、と口を塞ぐが、周りもそこら中で「ひゃーーー!」「ひえーーー!」「嘘でしょーー!」「やったーー!!」となってるから特別目立つことはなかったように思う。よかった。なんとなく、受験合格発表の日を思い出す。
とにかく早く席が見たくて、アリーナへと続く階段を降りた。この階段を降りれるのがほんとうに嬉しい。
列を数える。番号は後ろの方だから、トロッコで来てくれればファンサ貰えたりする位置かなあ?ステージ見辛くなっちゃうかなあ、でも私が見て来たNEWSのコンサートはいつも、ファン全員の近くに行けるような構成に作ってくれているし、アリーナに入れるだけでもう満足だ。
結果、センターステージの真正面だった。
ほぼ対面の距離でNEWSがパフォーマンスする席。DVDで憧れてた緑の柵も見える。銀テもその他も飛んでくる、目の前で銀テが落ちることがない。
震えた。
「……………トイレ」
「……あ、…」
「わたしも……」
「……あ、トイレ…」
しばらく席で呆然と座って、本当にここか、追い出されないか?間違っていないか?と疑いながらも、脳の端っこで言葉覚えたてのゴリラのような会話をしてトイレに並びにいく。
きゃっきゃっとしてにこにこしてる周りと打って変わってここの温度が違う。
「くるま…」
「え?」
「車で帰るとき…事故らないようにしないと…」
「手越……」
「まじで気をつけよう…そこは……」
「今日命日でも逆にあり…」
「まっすーの活躍が見れないなんて嫌だ…」
「て、手越……」
きゃっきゃっと出来たらどんなにいいか、望んだものが手に入ると人間は喜びの後に恐怖が襲ってくる、らしい。
完全にキャパオーバーだった。
コンサートが始まってから終わるまで、憧れの席で、NEWSを全員見た。
手越くんは顔が綺麗だし、増田くんがしてるアクセサリーの質感まで見える、加藤くんの汗も、小山くんの長い手足も高画質で撮っているカメラのすぐあとに見てる。
そこに生物状の女がいるという事を確実に認識されてる距離。
コンサートが終わった。
私の第一声は「つかれた……」だった。
あんな神席座っといて、疲れたとは何事だ、と思った人もいるだろう。
だけど、個人的には精神がとにかくすり減る席だったんだ…。
もちろん、パフォーマンス全部素晴らしかった、見やすかったし、ダンスも表情も歌も演出も最高だった。
ただ、私は人一倍自意識が高い。多分、過剰なくらい見られてる事に敏感だし、見られてなくても見られてると思ってしまう。そんな状態で、こっちにNEWSが全員歩いて来る。
途中で止まったりしない、真っ直ぐこちらに向かって、ギリギリまで歩いて来る。
「好きな人にいいお客さんだと思って貰わなければ」と思った。
私は真剣になると眉を顰めて棒立ちになるタイプで、今まで座った席ではずっとそうしていて、ある意味とても気楽な感じで見ていた。
「うしろも見えてるよ」とは言ってくれる、そういうNEWSが大好きだけど、集団として紛れることができる事にものすごく安心感と余裕を覚えていた。
が、今回は別である。
落ち着いたもう1人の私が「いや、そんなアイドルも一人一人なんか見てないよ」と言って来るけど、果たしてそうか?
例えばスタンドで変顔してもバレないけど、今回の席でいきなり変顔したら「!?」ってなるはずだ、バレるじゃないか。
率直にいうと、とても気を遣った。仕事でサービス業をしてるがそれくらいの体力を消耗した。もう一度体験したい、とも思うが、一回でいい、とも思った。
NEWSは多分そんなつもりじゃないだろうし、気楽に楽しんでくれるのが1番!くらいに思ってるかもしれないけど、そこは愛故、無理だ。すこぶる重たい愛故無理だ。
好きな人が目の前にいるんだ、2時間も。それはもう、好きになってもらいたい、いいお客さんでありたい。
増田担は、念願のファンサをもらって泣いていた。ふと隣を見るとまっすーがいて「まっすーじゃん!?」ってなってたら増田担の方を見ていて、「ありがとう」って言ってた。
私より前に見ていた、手越担が言うにはまっすーの歌詞が聞こえなくて変だな、と思っていたらしかった。
手越くんも加藤くんもステージのギリギリに来るときは基本後ろの方の人に幸せをあげていて、全然目が合わなかったけど、ふわっと甘い匂いがしたからもう秒で他界。
現世は正直ここで終わった。
幽霊になったまま、うちわから落ちた花びらまみれのハートを拾う。
疲れと、失恋した気持ちと、もっとちゃんと、いい感じのお客さんが出来たんじゃないかという自分の不甲斐なさが、どしっと襲ってきた。
その立派な反省を私生活にも生かしてもらいたいものである。
今日はオーラスで、この記事を書いてる間に15周年コンサートが味の素スタジアムで決まった。
…というLINEが増田担から来た。
さすがは私の尊敬するガチ恋勢、情報を捉えてくる早さはダッタン人の矢よりも早い。
味の素スタジアムのコンサート、絶対行きたい。あんなにつかれたとか言っておきながら、アリーナ入れるだけで素晴らしいとか言っときながら、これである。
本当に人間は欲深い。でも10周年は祝えなかったから、うちわにおめでとうの文字を刻みながら持っていたい。
今度は申し込みを忘れないようにしなきゃなと思う。