去年のコンサートロスが怖かったはなし
コンサート前々夜である。
いろいろ思っていた自分のモチベーションとは若干狂ったものの、やはり楽しみは楽しみに変わりない。
仕事の休みをとって行ったことない土地に足を踏み入れるのが楽しみなのか、2日も気の会う友人と、時間を気にせず喋ってられるのが楽しみなのか、コンサート自体が楽しみなのか、もうわからないがわくわくが止まらない。
心配事といえば車の運転と、あとは忘れ物くらいで……
いや、あった。
コンサートロス。
去年のWhiteの時、あと1ヶ月先くらいだったと思うけれど、私は宮城にいた。
初めての、人生初めてのコンサートである。
テレビで観ていたアイドルが生で観れる信じられなさと共に会場に向かう。
昼間、お昼過ぎくらい。空は晴れていた気がする。
言っても、正直アイドルなんざ存在しないものだと思っていた、絶対無い。
あんな肌も顔も綺麗なひとが、下から見ても画面映えするような人間がこの世に存在するわけ無い。全ては、天使の国の出来事である。
さて、グッズを買った。もっと混んでるものだと思っていたけれど、時間が早過ぎたのか、みんなもう手に入れていたのかわからないがあまりというかほぼ、人はいなくて、買い漏れがあったらすぐ買える状況だったので財布の紐が緩みまくる現象が起こる。予想外だ。
この財布の紐の緩み方が尋常じゃない。
ずっと欲しかったものを目の前にした衝撃たるや、財布の残高というよりは私はATMの残高を気にしていたような気がする。だから私はカードを持てないんだ。
買う予定のなかったものをちょいちょい手を出し、エコバッグよろしくパンパンになったバックと共に記念写真を撮ろうという話になった。
バックはもちろん、宮城のセキスイハイムスーパーアリーナ。
アリーナって!!?狭!!?
会場の外に着いてから何度この言葉をはっしただろう、そのくらい余裕がなかった。
あと、友人の手越担、増田担、私、3人ともNEWSの存在を信じていなくて半分夢を見ているような気分ではあった。
誰もが全員的外れなことを言っている、そして会話が噛み合わない。
写真を撮る。
いーじゃんいーじゃん、これインスタにあげよ〜♡なんて普段は絶対言わないような会話を増田担としている時、ふと手越担の気配が無くなる。
何故気配を消したのかわからなくて、そちらをみると、なんか、すごい、どうした?顔青いけど。
青ざめた手越担は大きい目を左右に動かしながら明らかに挙動不審な様子で言葉を発する。
「きこえる…………」
怖い。
なについちゃったのかな。
私が聞き返す間も無く、今度は増田担が崩れ落ちそうになっている。
なにこのパンデミック…。
なにが起こったかわからない私に二人は静かに、というようなジェスチャーをして耳をすます様に言った、すると。
あ、
きこえる…………。
うたって、る………
CD音源とは違う、まぎれも無い耳に馴染む声がきこえる。
これは所謂音漏れというやつで…、音漏れしてるってことは、この、真隣のアリーナで、うたっ…いっ…いや、CDだ、ぜっ…
「〜♪セブンカラ〜♪」
ウォウウォウがない。
ウワァーー入ってねえええええ
そのあとにきこえるウォウウォウ聴こえねえええええ
うたっ…てご…ウワァァァッッ
三人とも頭を抱えてその場に立ち尽くす。さっきのインスタなんたらの会話はもう遥か彼方に飛んで行ってしまった。所詮女子力なんてそんなものである。
手越担「いたよ……」
増田担「理解が追いつかない、頭が壊れそう」
お分かり頂けるだろうか、この混乱を例えるとビデオデッキに入らないビデオだ。手越君がこの世に存在しているという情報を脳みそに入れても、あまりの情報の信憑性のなさに戻ってきてしまう、いや、そもそも入らない。
神聖化とはそういうことだ。
そのあとの、コンサートはもうほぼ覚えていない。
ほんとうに何もかも覚えていないのだ。
ただ一つ、覚えているのはひたすら楽しかったことと、存在する天使を目の当たりにしたこと。
しかし、その代償がでかかった。
コンサートロス。ひたすら辛い。
まず、手越担が帰ってきていきなり寝込む。肺炎発症、(疲れも出たね…)手越のうちわを持ちながら寝込んでいたせいで、看病していたお母さんに「手越がこっちみてくるやめて…」と言われ、増田担は食事も喉を通らない。
私は、
私はただただずっと、加藤くんに大失恋した気持ちになっていた。
まず、住む世界の違いを目の当たりにする。
近かった、近かったけど、遠い。
知ってたけど、知ってたけど、ベットでずっと寝ている間、空を見つめて、私はどこかで何かを期待していたのだろうかと、自分に問いかけたくなってしまう。
そして、すごいフラッシュバックする。
めっちゃ覚えてる顔が階段登ってる時とか、お風呂に入ってる時にふと脳裏によぎってその度に跪くことになる(外では堪えたよ)
1日すぎたし大丈夫だろうと思って仕事をしていても、仕事中にフラッシュバックする。その度にトイレに行って、動悸を整えて、これが、なんとかれこれ一週間続く。
今思っても怖すぎる。
何が一番怖いって、いやこれすごい書くのも躊躇するけど、一瞬とはいえ、加藤くん拗らして小山くんに妬いたことが一番怖い。
今は平気ですほんと。
前々夜である。
今年も恐らくやってくるのだ。
一体どうなってしまうのだろう、私はあの感情と仲良くなれるだろうか。
出来ればミリアは聴きたくない、トリセツを用意して、今日は寝ることにしよう。
おやすみ、加藤くん。あと、ごめんよ、小山くん。また今年も一瞬妬くの、許してね、ごめんね。